春の七草
※この記事は外部ブログに掲載した記事を後日転載したものです。
春の七草
新年おめでとうございます。
三が日は、あっという間に過ぎ、明日はもう“七草”となります。
1月7日には、「七草粥」を食べる風習がありますが、何故7日なでしょうか。
六朝時代の中国に「荊楚記」(けいそき)という本があり、荊楚地方(揚子江中流域)に伝わる行事や風俗を記録してあるそうです。7世紀になって注釈が付けられ『荊楚歳時記』いう書名に確定したといわれています。その中で1月7日を「人日」(じんじつ)の節句とし、この日には7種類の野菜を入れた羮(あつもの)を食べる風習があったそうです。
それが日本に伝わり、年の初めに雪の下から芽をだした草を摘むという古代から行われていた「若菜摘み」に習合したのが、現在の「七草がゆ」となったようです。
ではその7種の草を、誰が選んだのでしょう。
室町時代に、「源氏物語」の注釈書『河海抄』(かかいしょう)を著した四辻善成
(よつじよしなり)が、全20巻の中の13巻「若菜」の注釈に「若菜まいる」の行事を12種の植物を合わせて羮(羮=野菜を煮て作ったとろみのある汁)にしたと書いています。その12種は『若菜、薊、苣(チシャ)、芹、蕨、薺(ナズナ)、葵(フユアオイ)蓬、水蓼(ヤナギタデの変種)、水雲(スイウン=もずく)、芝(シ=霊芝)、菘(スウ=蕪のことらしい)』です。その後、歌道師範家として名高い冷泉家に、歌の作者は不明ですが次のような歌が伝えられました。
「せり なずな ごぎょう はこべら ほとけのざ
すずな すずしろ これぞ七草」
この歌の方が、すっかり有名となって皆様もご存知でしょう。
日本原産の野菜は極めて少なく、在来種のセリ、ミズナ、ツルナ、フキ、ニラ、ミョウガ、ウド、ミツバ、ヤマイモ等のほとんどは菜です。菜とは「草や茎を食べられるもの草本」を示します。数ある若菜の中でもとりわけ芹は日本の栽培史上最も古く栄養価の高い野菜の一つで、今日までほとんど改良の手が加えられていない昔のままの姿を持つ数少ない貴重な植物なのです。万葉人は、冬枯れの野菜不足の時期に、萌えだしたばかりの野草を摘み集めて、栄養を摂っていたのでしょう。さぞかし春の到来を待ち望んでいたことでしょう。
七草粥を食べる風習は、平安の頃に宮中で始まったとされ、庶民に広まったのは江戸時代頃といわれています。この七草粥には、お正月にご馳走の食べすぎで疲れた胃を休め、野菜が乏しい冬場ですから、身近な野に生えている草で不足しがちな栄養素を補うという効能があります。
ところが現代では、春の七草”に詠まれた草は、そのおおかたが雑草扱いされているため、たいていは駆除されて、探してもなかなか見つかり難い植物たちです。本来、ホトケノザはコオニタビラコですが、どこでもよく目にするオニタビラコで代用し、市販の「七草セット」にもオニタビラコが入っている場合もあります。
桜の開花予報で著名だった昭和の気象学者 故大後美保氏は、栄養補給の点から考えて、“近代春の七草”には
「三つ葉、春菊、レタス、キャベツ、セロリ、ほうれん草、葱」を提唱されましたが、如何でしょうか。
栄養面ではよいかもしれませんが、歌としてはとうてい「・・・これぞ七草」には適わないと私には思えるのですが、いかがでしょうか。
春の七草
セリ(セリ科)
食欲増進、整腸、神経痛、リウマチ、小児の解熱に
ビタミンA、B2,C,、βカロテン、鉄分
ナズナ(薺)
ペンペンググサ(アブラナ科)
薬効:止血、消炎、消腫、腹痛、下痢、高血圧症に
タンパク質、ビタミンA、B1,B2、
カリウム、カルシウム、鉄等
ゴギョウ(御形)
ハハコブサ・母子草 (キク科)
鎮咳、去痰、利尿作用
成分は不明
ハコベラ(繁縷)
ハコベ(ナデシコ科)
利尿、浄血、採乳、胃腸炎、虫垂炎に
タンパク質、鉄分
ホトケノザ(仏の座) 注1
コオニタビラコ(キク科)
中国の本草学の基本書『本草綱目』によると胃腸に良いとされています
七草ではコオニタビラコを指しますが、最近ではオニタビラコで代用される場合もあります
抗酸化物質
スズナ(菘)
カブ(蕪)(アブラナ科)
胃もたれ解消・胸やけ防止・消化促進に
ビタミンC、ミネラル、カロテン等
スズシロ(蘿蔔)
ダイコン(大根)(アブラナ科)
消化促進・二日酔い防止・胸やけ予防・冷え性改善に
ビタミンA、C、ミネラル、鉄分等