サフラン
「クロッカスって今頃咲いたかしら・・・」という会話を耳にしました。
今咲いているのは、クロッカスCrocusではなくて、サフランCrocus sativusなのですが、間違えるのもそのはず、二種は、同じアヤメ科なのです。
クロッカスとはアヤメ科クロッカス属の総称なのです。
それでは見分けるにはどうするの?と訊かれそうですね。
最も簡単なのは、“咲く時期”で見極めます。早春に咲くのはクロッカスで、秋に咲くのがサフランなのです。
春に咲くクロッカスは“花サフラン”とも呼ばれ、鑑賞用のみに栽培されます。黄色、紫、赤紫、藤色、クリーム、白、紫と白の覆輪等花色は豊富です。
一方秋咲きクロッカスは、“薬用サフラン”と呼び、春咲きのと区別されます。
世界三大スープといわれるブイヤベース、リゾット、パエリヤ等の色を思い出してください。、それらには、必ずサフランが入り、それが、あの黄色なのです。開花した薬用サフランの花から3本の花柱を抜きとり乾燥させたものが、スパイスとして利用したものです。
ご覧のように一つの花には、3本の花柱があります。3本に見えますが、実は1本の雌しべが3つに分裂したものなのです。花柱は蔵紅花(ぞうこうか)といいますが、これを一つずつ手で抜き取って乾燥させたものが、生薬のサフランになります。
薬用ばかりでなくハーブとしてスパイスで利用されていますので、食品売り場ではスパイスのコーナーにも並んでいます。
サフラン1グラムを得るには花数は120~140個といわれ、1キロでは、17万個の花が必要だそうです。サフランはグラム単位で取引されているほど高価ですが、それも頷けます。
サフランは、生薬名もサフランといいます。
原産地は、ヨーロッパ南部から西アジアです。古代エジプトでは、婦人病の妙薬としての薬効が、パピルスに記されているそうですから、その当時から用いられていたと思われます。また、インドの伝統医学アーユルベーダでは生理痛、生理不順、更年期障害、ヒステリー、リウマチ、咳や慢性的な下痢に良いとされ、高く評価されているそうです。
日本には江戸時代に渡来し、血の道といわれる婦人病に用いられてきました。日本薬局方に入れられて、鎮静、鎮痛、通経等の婦人薬の原料に使われています。気分の優れないとき、ヒステリー気味、寝付きの悪い時や風邪気味の時、頭痛などに効き目があるとされています。
簡単な用い方は、カップによく乾燥したサフランを入れ熱湯を注ぎ、数分待ち橙色に色が変わると飲み頃となります。サフラン独特の香りがあるので、私はカルダモンを入れます。紅茶を煮て作るチャイにはカルダモンを入れるのですが、サフランティーにも合うと思って入れてみると、カルダモンの香りで美味しく飲めました。
左の写真のカップの中に入っているのはカルダモンです。風邪気味の時、試してみてください。
サフランの成分は、α、β、γ‐カロテン、色素配糖体であるクロシン、苦味配糖体ピクロクロシン、精油(テルペン、テルペンアルコール、エステル)、クロセチンなどを含んでいます。香りの主成分はサフラナールです。
このうち色素配糖体のクロシンは神経伝達物質の伝達効率を高める効果を期待できるそうです。クロシンにより記憶障害が改善されるというわけです。
このことは、ある実験によって証明されました。それは、30匹のマウスを暗い場所に置いてから、4グループに分けて、何も投与しなかったグループと、それぞれサフラン抽出液(クロシン)を、1.25mg・2.00mg・5.00mgを投与した3グループに分けところ、サフラン抽出液を飲ませなかったマウスは暗い部屋に戻ったのに対し、飲ませたマウスで暗い部屋に戻ったのは、それぞれ60%、30%、20%だったという結果になり、サフラン抽出液・クロシンの量が多いほど記憶障害が改善されたというのです。
このことは、サフランがアンチエイジングとして期待できるというので、嬉しいかぎりです。
アンチエイジングといえば、とかく表面だけに気を取られがちですが、記憶力の減退を自覚せざるを得ない私のような高齢者にとっては、身体の内からの改善が大切だと、改めて気付かされます。
こんなにも有用ないサフランですが、注意点があります。サフランには子宮収縮作用がありますから、妊娠中の方の使用は裂けてください。