ツワブキ
『秋草のしどろが端にものものし 生きを栄ゆるつはぶきの花』
伊藤左千夫はツワブキをこのように詠んでいます。秋から冬へのこの時期、周りは秋色に染まり枯れゆく草が入り乱れている傍らで、ツワブキは堂々として盛んに花をつけている・・・という意味でしょうか。丁度今頃のツワブキはそのとおりに見えます。
ツワブキ Farfugium japonicum は、艶のある大きな葉をもつキク科の常緑多年草です。本州太平洋側の福島県、日本海側の石川県以西の地域から、四国、九州、奄美大島、沖縄の海岸や山地の日陰に、普通に自生しています。日陰でもよく育つので、日本庭園にはよく栽培されています。
鑑賞用に、色々な斑が入った品種もあります.
名前の由来は“艶葉フキ”または“厚葉フキ”から転じたと云われています。
鑑賞用と思われがちですが、葉、根茎には薬効が知られており、民間薬的に用いられています。葉には強い抗菌作用があり、化膿や湿疹などの皮膚炎や打撲には、生葉を火で炙って柔らかくし、よく揉んで患部に貼り付けて用い、フグやカツオなどの魚の中毒には、生葉の絞り汁を50ml以上飲用するとよいと云われています。根茎の煎液も、健胃、下痢、魚毒の中毒にはよいそうです。しかし現在では薬用よりも園芸用、食用として利用されている事が多いようです。
学生時代、九州出身の友人から「ツワブキをフキと同じように煮て食べる」と聞いて驚きましたが、以来40年間、試してみようとは思いもしませんでした。10年ほど前、物は試しと食べてみました。すると食感が私好みで、フキとはまた違った美味しさがあるではありませんか!! 以来毎年春になると“きゃらぶき風”に作って堪能しています。フキは中に穴が開いていますが、ツワブキには穴が開いていないので、食感に違いがあるのでしょう。
ツワブキは’ “食べられますよ”と云っても全草ではなく、利用するのは“葉の開く前の若い葉柄”です。つまり若い茎のことです。しかしそのまま直ぐ調理は出来ません。アクが強いのであく抜きをしてから用います。このアク抜きは肝臓に対し有毒な物質ピロリジジンアルカロイドを抜くためなので、一手間かけなくてはなりません。(ピロリジジンアルカロイドは水溶性です)
【あく抜きの方法】】
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葉を取り除いた茎を熱湯に1分ほど浸けたのち、更に水に晒す。
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茎の皮は手で折りながら剥き、水に浸けておきます。
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水がアクで茶色になりますが、茎を取り出したその水を沸騰させて、茎を入れ1分ほど茹でます。
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更に水に30分くらい晒すとアクは抜けます。
こうやってアク抜きしてから、炒め煮、きゃらぶき、煮物、和え物、天ぷらなどに出来るのです。味付けはお好みで・・・ 私はごま油で炒め、つゆの素で味付けし、細切りの唐辛子を利かせたピリ辛煮にします。
物理学者であり文学者でもある寺田寅彦の言葉に、「天災は忘れた頃にやってくる」というのがあります。近年、未曾有の天災が続いていますが、日頃から用心を怠らぬようにという戒めです。
ツワブキは薬用にも食用にも利用できる植物です。まさかの折には、セルフメディケーションとして利用できますよ。
ガーデニングにツワブキを取り入れられる事を、お勧めしたいですねぇ。
学 名:Farfugium japonicum
科 名:キク科
民間薬として:橐吾葉(たくごよう)
利用部位:葉、茎、根茎
薬 効:葉には強い抗菌作用があり、腫れ物、できもの、湿疹に。
根茎には健胃、食中毒、下痢に。
使 用 法:・化膿、湿疹 ⇒ 生葉の絞り汁を、患部に塗布します。
・打撲、おできなどの腫れ物、切り傷 ⇒ 洗った葉をきれいなフライパン
で炙り、柔らかくなったら、千切って患部に貼ります。生葉を青汁が出
るまで手で揉 んで患部に貼ってもよい。
・健胃、食あたり、下痢 、魚毒(フグやカツオなどの魚の中毒)には
⇒ 乾燥した根茎10~20gを水400ccで1/3量にまで煎じて服用します。
・食用に。
成 分:ヘキセナール、セスキテルペノイド、アルカロイド